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コロナ融資返済のリスケは出来る限り回避したい(リスケor借り換え?)

コロナ融資返済のリスケは出来る限り回避したい(リスケor借り換え?)

こんにちは。
売上UP・利益UP請負人、社外の経営参謀
トップギヤコンサルティングの沼尻洋壱です。

2020年12月末までに決定したコロナ融資ですが、多くの中小企業、小規模事業者の皆様がご利用されたことと思います。
このコロナ融資は返済の据え置き期間を5年以内で設定できました。

しかし、最長5年以内とはいっても金融機関の動きが悪かったり考えに問題があったりして据置期間を1年以内に設定した事業者も多かったようです。
この据置期間を1年以内に設定していた事業者の割合は、日本政策金融公庫で66%、民間金融機関では56%と結構大きな割合でした。

今後、かなりの事業者において、コロナ融資の返済が始まります。
しかし、昨今下火になってきたとはいえ、新型コロナウイルスの影響はまだ収まっておらず、返済が始まっても返せない事業者がほとんどでしょう。

だからこそ据置期間が終了する前に、金融機関に
「据置期間の延長を依頼する必要がある」
と以前、当方のブログ、メールマガジンでもお伝えしました。

参照ブログ:据置期間(返済猶予期間)の延ばし方

当時このように書きましたが、今日はその補足説明、なぜ私が契約条件変更をおすすめしないかを改めてお伝えします。

1、契約条件変更をすると、新規融資をしてもらいにくくなる

「契約条件変更」をお願いする方法とは、「条件変更契約書」を新たに差し入れ、現状の契約内容で据置期間のみを延長してもらうこと、いわゆる「リスケ(リスケジューリング)」と言われる方法です。

「リスケしている企業」=「返済能力のない企業」と判断されてしまうため、金融機関が新規融資に二の足を踏むようになってしまいます。

現在、金融庁から金融機関に、
「コロナ関連融資に関しては、当該融資をリスケした場合でも、積極的に新規融資に応じること」
という要請が出ています。

ただしその要請には残念ながら強制力がなく、従わない金融機関が大半を占めているのが現状です。

2、なぜ金融機関が金融庁の要請に従わないのか

金融庁の要請は、金融機関にとって「指示」のようなものです。
しかしながら、この件に関しては金融機関もなかなか従いませんし、しかも金融庁も強く言えません。

なぜならリスケ先に新規融資を行うことで、収益がマイナスになるからです。

金融検査マニュアルという、金融庁が各金融機関に出していたマニュアルの中に、企業の格付けについての記載がありました。
2019年12月にこのマニュアルは廃止されましたが、その格付けの考え方はまだ金融機関では生きています。

リスケをしてしまうと、その企業の「格付け」は下がります。
「格付け」が下がると、金融機関は「貸倒引当金」を積み増さなければならなくなります。
貸倒引当金は金融機関にとって、「費用」となります。
つまり、貸倒引当金を積み増せば、収益は減ってしまうのです。

この格付けと貸倒引当金についての話は、ドラマ「半沢直樹」でも以前取り上げられていましたね。

例えば、そのすでに廃止された金融検査マニュアルでの「要管理先」になった場合は、貸倒引当金を20%程度積まなければなりません
(ちなみに現在は、その比率は金融機関の裁量に任されています)。

金融検査マニュアルによる格付けは、【金融検査マニュアル別表の概要1】のPDFがわかりやすいでしょう。

○金融検査マニュアル別表の概要1
https://www.fsa.go.jp/singi/yuusiken/siryou/appendix01.pdf#page=6

例に出した「要管理先」の位置をご確認ください。
※繰り返しますが、金融検査マニュアルは2019年12月に廃止されています

例えば、新たに1千万円の融資をした場合、それだけで2百万円の貸倒引当金を積まなくてはならなくなります。
貸出金利2%~3%の先に対する20%の貸倒引当金は、金融機関にとって大きなダメージです。

わかりやすい説明のために極端な例を挙げましたが、リスケ先に金融機関が新規融資をしない理由はご理解いただけたと思います。

参考資料:金融検査マニュアル別表の概要1

3、借り換えなら貸倒引当金を積み増さずに済む

一方、借り換えなら正常の融資となるため、企業の格付けが下がることがありません。
つまり金融機関としては、貸倒引当金を積み増す必要がないのです。

また、当初融資したときと状況が変わっていない場合、よほどのことがない限り、同額借り換えなら金融機関も保証協会も断る理由がありません。
(新型コロナウイルスの影響が大きすぎて、財務内容や経営内容が致命的なほど悪化している場合はその限りではありませんが)

今後、1回目のコロナ融資で借りた資金が枯渇する企業が出てくることは、金融機関も予想しています。
そのとき企業の格付けが「正常先」なら対応可能ですから、借り換えには比較的前向きに応じてくれます。

4、借り換えにあたっての注意点

2021年12月末日までに日本政策金融公庫で借り換えする場合は、問題はありません。

しかし、「民間金融機関による実質無利子・無担保制度」で借りているコロナ融資を借り換える場合は、注意が必要です。

なぜなら借り換えることにより、「金利」「保証料」が必要になるからです。

「民間金融機関による実質無利子・無担保制度」では、3年間の金利と、保証期間全体の保証料がゼロになっていました。
しかしこの制度は2021年3月31日で終了したため、新たに借り換える場合は、「金利」も「保証料」も必要です。


そのようなわけで、「民間金融機関による実質無利子・無担保制度」を利用した事業者の選択肢は3つ。

①金利や保証料を払わず返済を始める ←可能ならこれがベスト
②金利や保証料を支払ってでも、返済猶予を延長する(借り換え)
③将来の融資による資金調達をあきらめ、条件変更を依頼する(リスケ)

事業者は(もちろん自己責任で)、この3つの選択肢からいずれかを選ばないといけません。
後悔しない選択ができるよう、最新情報と照らし合わせながら、企業の状況に応じ検討いただけたらと思います。

ちなみに上記と相反することですが、リスケをしたからといって絶対に新規融資を借りられないわけではありません。
実現可能性が高く、将来性のある事業計画書(経営改善計画書)を作成すれば、新規融資を引き出すことは不可能ではないのです。

その資金でリスケしている債務を決済すれば、「正常先」へ格付けが上がるため、その後の新規融資も可能になります。

当方では金融機関との上手い付き合い方のアドバイスや、資金調達のサポートもしています。ご不明な点やご相談がございましたらお問い合わせページよりお問い合わせください。

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