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メインバンク以外から借り換えの提案があったらどうしますか?

メインバンク以外から借り換えの提案があったらどうしますか?

こんにちは。
融資に強い専門家、法人営業特化型コンサルタント
トップギヤコンサルティングの沼尻洋壱です。

多くの企業、事業者は金融機関から大なり小なり借入を行っていると思います。
基本的にはメインバンクがあり、そこから融資を受けていると思いますが、もしメインバンク以外のサブバンクから、
「メインバンクで借りている分を当行(サブバンク)で借り換えしませんか?」
と提案されたらどうしますか?

乗るべきか・断るべきか・その判断の基準は??
具体例を交えて考えてみましょう。

まず例えばということで、例題の融資状況は以下の通りです。

▶現状の融資状況
現在借りている融資残高は以下の2点です

①メインバンクA銀行(第二地方銀行)からの借入
・事業資金  40,000千円(金利1.4%)
・住宅ローン 80,000千円(金利1.0%)

②サブバンクB銀行(地方銀行)からの借入
・コロナ融資 15,000千円

これが現在の状況です。
そこから今回、サブバンクB銀行から、メインバンクA銀行の借入分(120,000千円)の借り換え提案があったと仮定しましょう。

▶サブバンクB銀行からの借り換え提案
サブバンクB銀行が提案してきた借り換え提案は以下の2点です。
①事業資金借り換え
金額  :40,000千円(金利0.9%)
融資期間:18年(216回返済)
担保  :自宅・会社の土地・建物に120,000千円の根抵当権設定
手数料 :55,000円
融資条件:本件資金によりメインバンクからの借入を全額決済

②住宅ローン借り換え
金額  :80,000千円(金利0.6%)
融資期間:33年(396回返済)
担保  :自宅・会社の土地・建物に120,000千円の根抵当権設定
手数料 :1,980,000円
融資条件:本件資金によりメインバンクからの借入を全額決済

これがサブバンクB銀行から提案してきた借り換えの提案だとします。
金利も下がって良さそうですが・・・。

では、借り換えのメリットを列記してみましょう。

▶借換えのメリット
金利が下がりますから、単純に返済合計額がその金利分減ります。
そこで、今回の借り換え案に乗った場合に削減できる金利額を考えた場合、

①事業資金金利:(現状)1.4%→(借り換え後)0.9%
支払利息の削減額 約2,000千円

②住宅ローン金利:(現状)1.0%→(借り換え後)0.6%
 支払利息の削減額 約17,000千円

①、②を合わせた合計の支払利息削減額は約19,000千円だと仮定します。
結構な金額ですよね。
さあ、あなたならどう判断するでしょうか。

改めて、この借り換え提案、乗りますか?お断りしますか?
また、この判断時の注意点は?

1、今回のサブバンクB銀行からの提案を受けた方が良い?

このサブバンクB銀行からの提案は受けた方が良いのかどうなのか。

まず、返済する金額が19,000千円も減るなら、通常はこの提案を受けるべきだと考えます。
ただし、その前に確認しておくことがあります。

それは、借り換えした銀行(今回の場合サブバンク)が、今後も真剣にサポートしてくれるスタンスを持っているかどうか、です。

ビジネスを続けていくのであれば、今後も資金が必要になる場面は出てくるでしょう。
そのとき真剣にサポートしてくれない金融機関だと、もしもの時に資金繰りに支障をきたしかねません。

19,000千円という金額は大きいですが、目先の数字に惑わされて後のサポートに積極的でない金融機関との関係を強めてしまったら、いざというときに頼れる先がなくなります。

今後も資金が必要な際にはサポートをしてくれるのか。その見極めを行ったうえで、今後も安心してつきあえる金融機関だと判断できれば、借り換えは行ってよいと思います。

しかしながら、サブバンクB銀行が真剣にサポートしてくれるかどうかを判断しなければならないならば、今まで事業資金などで頼りにしてきたメインバンクA銀行との付き合いを継続出来たら、それに越したことはないですよね。
そこで次の2、メインバンクA銀行との交渉です。

2、今回のサブバンクB銀行の提案をメインバンクA銀行に伝えて交渉すべきことは?

サブバンクB銀行からの好条件での借り換え提案があった場合に、それをもってメインバンクA銀行と交渉すべきことは以下の通りです。
今回サブバンクB銀行からいただいた提案書をメインバンクA銀行に見せて、次のように交渉してみましょう。

経営者:
「今回、B銀行さんがこのような提案をしてきました。この提案に乗ると、トータルで支払い金利が19,000千円削減できます。弊社のような中小企業にとって19,000千円の金利が削減できるのは大きな魅力です。
ですので、この提案に乗ろうと思っていますが、そうなると今までお世話になった御行との取引がなくなることになってしまい忍びなく思います。
 もしB銀行と同じ条件にしていただければ、引き続き御行との取引を継続したいと考えています。
いかがでしょうか?」

これでもし、首尾よく交渉が進んで金利を引き下げてもらえれば、サブバンクB銀行の提案書に記載されている合計約2,000千円の手数料を支払う必要がなくなり、支払利息もB銀行の提案額と同額まで下げられます。

3、サブバンクB銀行からの提案にある「手数料」とは何か?

さて、ここでサブバンクからの提案にある「手数料」とは一体何なのでしょうか。

2つの借り換えのうち手数料負担が大きいのは、上記で示したとおり「②住宅ローン」の1,980千円です。
(一方、「①事業資金借り換え」の手数料は約50千円)

住宅ローンの借換には「保証会社に支払う『保証料』」「根抵当権設定費用」「事務手数料」「印紙料」がかかり、そのうちいちばん大きいのは「保証会社に支払う『保証料』」です。
つまり、この手数料とは、その大部分が保証料だということになります。

金融機関や保証会社によって保証料率は違いますが、80,000千円の住宅ローンなら2,000千円ぐらいの保証料は妥当だと思います。

4、もし借り換えで「取引金融機関が1行のみ」になった場合の今後の資金調達リスクは?

取引金融機関が1行のみという状況は、もしもの時に好ましい状況ではありませんし、借り入れを行う際にも金利が高く設定されたりする(金利交渉をする余地がない)リスクがあります。
ここで、メインバンクA銀行が金利交渉に応じて金利を引き下げてくれたら、「1行のみ取引」のリスクを避けられます。
しかし応じてもらえなければサブバンクB銀行に全額借換となり、メインバンクA銀行との取引はなくなってしまいます。

「1行のみ取引」は、何としてでも避けたい事態ですし、私は常に取引金融機関はメインとサブの2行持つべきだと提案しています。

そこで、メインバンクA銀行が金利引き下げに応じてもらえなかったら、きっぱりこう告げましょう。

経営者:
「19,000千円の差は弊社にとって大きいため、金利引き下げに応じていただけないのであれば他行で借換することにします」

次いで、こう提案してみてください。プロパーの新規融資です。

経営者:
「まったく取引がなくなるのも申し訳ないので、5,000千円程度なら新たにプロパーで借りてもいいと考えています。いかがでしょうか?」

担当者(場合によると支店長や貸付担当役席)は、「全額借り換えられる」より「5,000千円だけでも守った」形にしたいはずです。
本部からの印象が変わるからです(←これ大事です)。

※優良顧客の億単位の借り換えが発生すると本部からの評価が下がり、支店に厳しい措置(支店長や担当者の左遷等)が下ることがよくあります。
支店は本部からの評価をたいへん気にしています。

プロパーの新規融資に対応してもらえれば、1行のみ取引を避けることは可能です。

しかし、この提案にも対応してもらえないとメインバンクとの取引は完全に終わり、「第3の金融機関」の開拓を急ぐ新しい段階に入る必要があります。


さて、サブバンクが借り換えの提案をしてきた場合の対応は以上のようになります。

融資のとき、とくに取引(関係)強化を金融機関が強く希望する場合、一見事業者の得になりそうな提案をしたりします。
今回の例だと、「返済合計額が約19,000千円少なくなる」ですね。

※住宅ローン借換手数料の約2,000千円を差し引けば計17,000千円です

しかし、長期的に考えるとマイナスになる(可能性のある)提案もあります。
今回の例では「1行取引リスク」です。

一方で、仮に厳しめの「融資の条件」をつけられた場合でも、交渉次第で条件緩和は可能だということです。

金利や返済期間の変更はしばしばあります。
このように金融機関の言うことは「絶対」「変更不可」ではないのですが、金融機関との交渉に慣れていない事業者は「言いなり」になりがちです。
そのため、事業者側が損をすることになる例が後を絶ちません。

ご不明な点、金融機関との上手な付き合い方などについてのご相談などありましたら、お問い合わせページよりご一報ください。

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