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適切なプロセスを踏めば経営者保証は外せます

適切なプロセスを踏めば経営者保証は外せます

今月2日に岸田総理が、スタートアップ(新興企業)の創出や育成を促すため、政府系の商工中金が手がける創業融資で経営者の個人保証を原則廃止するということを言っていました。
また民間金融機関の融資でも、信用保証協会の保証があれば個人保証を求めない制度を新設するそうです。

多くの創業者が悩まれるのがスタート時の資金面で、しかも金融機関から借りるとなると連帯保証人で創業者が個人保証を付けないとダメだったりするので、そこもまた悩みの種でした。
しかし今回、岸田総理から上記のような方針が示されたので、これが正式に始まれば創業時の悩みはだいぶ減ることになると思います。

さて、創業者についてはこのような方針が明らかになってきていますが、それ以外の一般的な経営者についても経営者個人が連帯保証人となって資金の融資を受けている方が多いと思います。
そのためか、融資に関する相談で近ごろ増えてきたのが「経営者保証免除」についてです。
とくに税理士からこのような相談をされることが多いです。
「経営者保証を外したいのでサポートしてほしい」
「経営者保証を不要とする融資を教えてほしい」
といった内容です。

この経営者保証の免除は、金融機関のプロパー融資については少々大変です。
しかしながら、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付き融資なら、要件を満たすだけで経営者保証を外すことができます。

今回はこの、「経営者保証免除」についてご案内します。

1、日本政策金融公庫は担当者側から尋ねられる

この経営者保証の免除について、実は日本政策金融公庫で融資を受ける際、申請者が経営者保証免除の要件を満たしていれば、担当者側から
「経営者保証免除で申請もできます。どうしますか?」
と訊いてくれます。

申請者側で
「経営者保証免除でお願いしたい」
とわざわざ申し出る必要はありません。

ところが、信用保証協会の保証付き融資となると、少々勝手が異なります。

2、要注意!保証協会の保証付き融資で経営者保証を外す場合

金融機関などで信用保証協会の保証付き融資を申請する際に保証人免除の要件(これは後程ご説明します)を満たしていても、申請者から経営者保証を免除してほしいと申し出なければ、経営者保証免除をしてもらうことはできません。

信用保証協会の保証付き融資の場合、金融機関から信用保証協会に「経営者保証免除の申請」を行うことが必要なのです。
しかし、一般的に金融機関は、融資に十分な保全を取りたがる傾向があります。
そのため、要件を満たしても申請者側から何も言わなければ、ほとんどの場合「経営者保証付き」で保証協会に申請します。
金融機関からの申請が「経営者保証付き」での申請となれば、もちろん保証協会もその前提で審査します。

たとえ借入を申し込んだ企業側が経営者保証免除の要件を満たしていたとしても、保証協会の担当者は
「この申請者は経営者保証免除の要件を満たしていますが、経営者保証免除でなくていいのですか?」

なんて、気のきいたことは決して言ってくれません。

信用保証協会の保証付き融資を申請するときは、「経営者保証免除」で対応してほしいと申請者から金融機関にわざわざ依頼する必要があるのです。

3、信用保証協会が経営者保証を外す要件

それでは、どのような条件を満たすと信用保証協会が経営者保証を外してくれるのでしょうか?
保証制度によって、信用保証協会における経営者保証免除の要件は変わります。

①伴走支援型特別保証制度の要件

伴走支援型特別保証制度で経営者保証を免除してもらうための要件は以下の通りです。

・直近の決算書が資産超過であること
・法人と代表者との関係において、法人と経営者の資産・経理が明確に区分されており、法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付け等)について、社会通念上適切な範囲を超えていない。

基本的には、「資産超過」「法人から経営者への貸付金・仮払金等が、総資産の1%以下又は100万円以下」という要件を満たしていれば、経営者保証を免除してもらえる可能性が高いです。

なお、経営者保証を外す依頼をする場合に保証協会に提出する書類に、経営者保証免除対応確認書というものがあります。この書類の中に、
「経営者保証免除対応適用の可否については、金融機関及び信用保証協会の審査により決定する」
との文言がありますので、要件を満たしていればかならず経営者保証が免除されるわけではありません。

しかしながら、実際のところは保証人免除となっているケースがほとんどのようです。

ちなみに、経営者保証を免除する場合は、信用保証料率が0.2%上乗せされます。

②事業承継特別保証制度

2020年4月から始まった制度です。
事業承継時に一定の要件を満たしている場合は、旧代表取締役も、新代表取締役も両方とも経営者保証免除となります。

経営者保証免除の要件は以下の通りです。
・資産超過であること
・返済緩和中ではないこと
・EBITDA有利子負債倍率((借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費))が10倍以内
・法人と経営者の分離がなされていること

この制度を利用することによって、金融機関のプロパー融資を保証人免除の保証協会の保証付き融資に切り替えることもできます。

③金融機関関連型

金融機関関連型で経営者保証を免除してもらうための要件は以下の通りです。

下記の1)または2)のいずれか、および3)を満たすほか、法人と経営者の一体性解消を図っている(図ろうとしている)。

1)取扱金融機関において、経営者保証を不要とし、かつ担保による保全が図られていないプロパー融資残高がある。
2) 取扱金融機関において、経営者保証を不要とし、かつ担保による保全が図られていないプロパー融資を保証付融資と同時に実行する。
3) 財務要件(「直近決算期において債務超過でないこと」かつ「直近2期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと」)を満たしている。
4)以下の項目に該当している。
・法人と経営者個人の資産・経理が明確に区分されている
・法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与・配当・オーナーへの貸付等)について社会通念上適切な範囲を超えていない
・適時適切に財務情報等が提供されている

④財務要件型

財務要件型で経営者保証を免除してもらうための要件は以下の通りです。

次の1~3のいずれかに該当する中小企業者
1・純資産額が5千万円以上3億円未満であり、自己資本比率が20%以上または純資産倍率が2.0倍以上、かつインタレスト・ガバレッジ・レーシオが2.0倍以上または使用総資本事業利益率が10%以上であること
2・純資産額が3億円以上5億円未満であり、自己資本比率が20%以上または純資産倍率が1.5倍以上、かつインタレスト・ガバレッジ・レーシオが1.5倍以上または使用総資本事業利益率が10%以上であること
3・純資産額が5億円以上であり、自己資本比率が15%以上または純資産倍率が1.5倍以上、かつインタレスト・ガバレッジ・レーシオが1.0倍以上または使用総資本事業利益率が5%以上であること

⑤担保充足型

申込人または代表者本人が所有する不動産を担保提供して、十分な保全が図られている場合も、交渉により保証人免除してもらえます。
ただし、担保提供者が申込人以外の場合には、物上保証人になる必要があります。


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改めて、日本政策金融公庫なら要件を満たしていると担当者が気をきかせて経営者保証を免除する方向で対応してくれます。
ところが、信用保証協会の保証つき融資は、申請者からの申し出が必須です。

上記の制度を知らずに申請すると、当然ながら「経営者保証つき」の融資になります。
金融機関から信用保証協会の保証付き融資を受けようと考えた時は、こちらから金融機関へ経営者保証を外す提案をするようにしましょう。

当方では金融機関との上手い付き合い方のアドバイスや、資金調達のサポートもしています。
相談初回2時間無料でお話を伺いますので、ご不明な点やご相談がございましたら当方のWebサイトお問い合わせページよりお問い合わせください。

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