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設備資金で借りた資金を運転資金に流用すると次の融資を受けられなくなります

設備資金で借りた資金を運転資金に流用すると次の融資を受けられなくなります

先日顧問先企業から
「公庫からコロナ融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)を借りて、信金のコロナ融資を返済しても問題ないですか?」
との質問をされました。

結論から言うとNGです。

公庫のコロナ融資は、公庫の既存融資を借り換えるためならば利用可能ですが、民間金融機関の借入金の借り換えには利用できません。
(公庫のコロナ融資を借りる予定だが、その間の「つなぎ融資」で民間金融機関から借りた場合は、その返済に充てることは原則可能です)

では、信用保証協会の保証を付けて設備資金を借りた場合、それを運転資金に回してしまった場合はどうでしょうか。

先日このような質問がありました。
「信用保証協会から、前回の融資について問い合わせがあり、借りた資金の使途を細かく尋ねられました。
前回の融資の話をなぜ今になって聞いてくるのでしょうか?
この問い合わせには、どんな意図があるのですか?」
ちなみにこの質問は、事業者が2度目(以上)の保証協会の保証付き融資を申し込んだときに発生しています。

これは今後の融資に深く関わる内容ですので、内容をよく把握してください。

1、信用保証協会で設備資金の融資がおりたとき起こること

まずは設備資金のため、信用保証協会の保証付きで融資を受けた時のお話をしましょう。

事業者は、設備投資への融資がおりると、基本的にその設備投資に支払った領収書のコピーを金融機関に提出するのが決まりです。
しかしながら、実際に提出しているケースばかりではありません。

さらに金融機関も
「あの融資に関わる設備の領収書を出してください」
と何度も催促するかといえば、そんなケースばかりとはいえないのが実情です。
もちろん「着金したら即、仕入れ先に振込」を確実に実行するために、あらかじめ振込書を事業者に書いてもらっておく金融機関もあります。
しかし、そんな金融機関ばかりかといえばそうでもないのです。

さらにさらに信用保証協会の側も
「あれ、あの案件の領収書がまだ届いていないな。金融機関に催促しておこう」
と具体的な行動に出るかといえば、多忙でそこまで手が回らないのです。

おわかりでしょうか。
領収書コピーの不在は、ここまで不問で済まされるケースが多いのです。

しかしながら、その催促されなかった領収書のコピー不在問題が「浮上」する場合があるのです。
それはいつなのでしょうか?

それは次の信用保証協会の信用保証付き融資を受けるときです。
 

2、信用保証協会に再度の融資を申し込む時に調査が入る

多くの場合、次回の融資申し込みがあって初めて、金融機関は「前回の融資のときは・・・」と過去資料をチェックし始めます。
なぜなら保証協会から「前回の融資時の領収書はどうなった?」と尋ねられるからです。

つまり、
先の質問の、2度目(以上)の保証協会の保証付き融資を申し込んだときに前回の融資に関する調査が入るのは、
「前回の融資で貸した資金の使い途は、申請どおりだったか?」
を確認しているのです。

3、信用保証協会はなぜ資金使途を確認するのか

ではなぜ信用保証協会は、資金使途を重視して確認してくるのでしょうか?
それは、融資を申請した資金使途とは違う目的に使うと、「資金使途違反」になるからです。

・運転資金で借りたものを設備資金に流用したら

融資を申し込むと、かならず「資金使途」を尋ねられます。
「資金使途」は大きく分けて、「設備資金」と「運転資金」。

「運転資金」として借りていた資金を「設備資金」に流用しても、細かく質されることはないと思われます。
なぜなら「設備投資を行ったため運転資金が不足した」と釈明されがちで、実際にそうなることが往々にしてあるからです。

・設備資金で借りたものを運転資金に流用したら

しかし「設備資金」として借りていた資金を「運転資金」に流用すると、明確な「資金使途違反」として取り扱われます。
「売上や収益の増加を図る」ことを目的として設備投資を行うための融資を行ったにもかかわらず、当該設備を導入しなかったのですから、審査の前提条件が変わってきます。

そして、「設備資金」を「運転資金」に流用したときの「資金使途違反」には、けっして小さくないペナルティが課されます。

4、資金使途違反のペナルティとは?

「資金使途違反」を行った場合のペナルティは何なのでしょうか。
それは、信用保証協会の保証付き融資を受けられなくなるということです。

以前に信用保証協会の保証付きで借り入れた融資が「資金使途違反」だった場合、保証協会は基本的に「新たな保証」を行いません。
信用保証協会の保証付き融資を借り入れることは、実質的に不可能になります。

また、この措置は当該融資が全額返済されるまで続きます。

5、想定外に安価で設備を購入できたA社の資金使途違反

例として資金使途違反の事例をお話ししましょう。

・浮いた資金を運転資金に流用

A社は設備資金名目で、申請時にその設備800万円の見積書を提出し、その見積書通りに800万円を、メインバンクB信金から借りました。

しかし、交渉により仕入れ先から割引をしてもらえて、実施の購入額は600万円になりました。
そこで浮いた200万円を、深く考えることなく「これ幸い」と運転資金に流用したのでした。

そして、仕入れ先からの600万円の領収書は、B信金に提出しませんでした。
新しい設備の運用開始で、それどころではなかったからです。
また、B信金からの催促もありませんでしたし、「そんなものなのかな」と悪意なく思っていただけでした。

・3年後の新規融資申請時、前回融資について問い合わせが入る

さて3年後にA社は、今度は運転資金として、メインバンクB信金を通して信用保証協会の保証付き融資を申請しました。

その際にB信金を通して、保証協会から前回の設備資金の領収書の提出を求められます。
そこで当時、実際に仕入れ先から受け取った600万円の領収書を提出すると、
「差額の200万円はどうなったのか?」
と尋ねられました。

・新規融資が受けられず

もとより事業者に悪意はありませんでしたから、「運転資金に利用した」と正直に回答したところ、「資金使途違反のため新規保証はできない」と言われ、運転資金を借り入れることができなかったのです。

6、設備資金で借りた資金が余った場合はどうする?

では、A社のように当初の見積書の額より安く設備を購入でき、借りた資金が余った場合はどうすればいいのでしょうか。

答えはひとつです。
「借り入れた金融機関を通して保証協会に問い合わせましょう」

問い合わせ例:
「見積書の額より200万円ほど安く購入することができました。
この200万円は、いったん返済すべきでしょうか?
それとも運転資金として流用してもいいですか?」

ほとんどの場合は返済を求められます。
しかしまれに
「そういうことなら200万円は運転資金として流用していただいても結構です」
という返答を得られることもあります。

許可が出れば、後顧の憂いなく運転資金への流用が可能です。
信用保証協会からOKの回答を貰ったうえでの流用ですから、次に融資を申し込んでも資金使途違反を指摘されることはありません。

7、資金使途違反をしてしまった場合、どのように信用を回復するか

予定より安価で設備購入できても、余った資金を保証協会に相談なく運転資金として流用すると、新規融資をしてもらえなくなります。
安易な資金流用は御法度です。

では資金使途違反で傷ついた信用を、どのように取り戻せばいいのでしょう。
もうその事業者は永遠に信用保証協会の保証付き融資は借りることが出来ないのでしょうか。

いえ、そんなことはありません。
信用を回復する方法は、その「資金使途違反」をしている融資をすべて返済することです。
「資金使途違反」をしている融資がすべて返済されると、改めて信用保証協会の保証付き融資を受けられるようになることが多いです。


設備資金として借りて、浮いた資金を運転資金に流用したA社の事例をお話しました。

A社のように、予想外に設備を安く買えたため、設備資金名目で借りていた余剰資金を運転資金に流用したケースでも、事業者はまさか「新規融資NG」の重いペナルティを課されるとは思わなかったでしょう。

このような金融機関特有のルールに通じた事業者は少なく、イレギュラーなことが起こっても「イレギュラーだ」とさえ気づきません。
借りた資金が余っても、保証協会に相談はせず、「借りた資金が余ることもあるだろう」と安易に運転資金に回しがちです。

信用保証協会の保証付きで「設備資金」として借りた資金は、「運転資金」に流用してはいけません。


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