BLOG ブログ

「うちは経営者保証解除出来るのだろうか?」具体的な申請基準5点を解説

「うちは経営者保証解除出来るのだろうか?」具体的な申請基準5点を解説

経営者の皆さんの中には、ご自身を保証人にして金融機関から事業資金の融資を受けている方も多いと思います。

2023年4月より金融庁から「経営者保証改革プログラム」というものが発表されました。
これにより、経営者ご自身を保証人にする、いわゆる「経営者保証」について、経営者保証なしで資金を融資してもらえる、または既存の経営者保証付きの融資に対して経営者保証を解除できる可能性が高くなりました。

「経営者保証改革プログラム」に関する事業者向け説明パンフレットが金融庁から出ています。
※金融庁:「経営者保証改革プログラム」に関する事業者向けパンフレットの作成について

以前こちらのブログでも内容を解説しています
※参照ブログ:2023年4月以降の「経営者保証解除」交渉ポイント

当社でも「顧客・顧問先の経営者保証解除」に関するご相談をいただくことが出てきました。

しかしながら一方で、
「経営者保証解除?イマイチ盛り上がっていないなあ」
との声も耳にします。

特に税理士からこのような話を聞くことがあります。
税理士:
「経営者に万一のことがあったら・・・」
「そのときのご家族のことを考えたら・・・」
おすすめしたいのはやまやまですが「今じゃないかな」と、私もあえて強くは言えなくて・・・。

また事業者自身も、経営者保証解除に積極的なところあれば、「今はちょっと」と尻込みするケースもあるとのこと。

さて両者の事業実態の違いは、具体的にどこにあるのでしょう?

1、(一部の間で)経営者保証解除がイマイチ盛り上がっていない理由

経営者保証解除に消極的な事業者の事情を税理士に尋ねたところ、以下のような回答がありました。

・経営者保証を解除したら既存融資の金利が上がって、資金繰りが厳しくなるから
・銀行を刺激したくない、いざというときに新規融資を借りられないかもしれないから
・あと1年で返済が終わるので、今わざわざ解除しなくてもいいと考えているから

とくに金融機関の目から見て「ギリギリ正常先」の事業者は、経営者保証解除の申請で既存融資の金利アップで資金繰りが悪化したり、新規融資に悪影響が出たりすることを恐れているようです。

ちなみに「ギリギリ正常先」とは、「現在の融資は滞りなく返済を続けているが、資金繰りがギリギリで、余裕の現預金がない」事業者のことです。

こちらをご覧の事業者の皆さんの状況はいかがでしょうか。
経営者保証を外したいとお考えですか?
それとも・・・? 

2、経営者保証を免除する新規融資審査の厳格化が予想される

2023年4月に金融庁の指導方針が変更され、金融機関は経営者保証の徴求をしにくくなりました。

事業者にとって良いことかといえば、そうともいえないのが実情です。
なぜならば、金融機関には、一定要件を満たした事業者に対する経営者保証の免除が指導されていますが、「ギリギリで」要件をクリアしている事業者だと、新規融資の審査を厳しめにすることが予想されるからです。

「現在は要件クリアしているものの、将来は懐疑的」。
そんな事業者に対して経営者免除で融資してしまうと、いざというときに回収できない可能性が高まります。
それなら最初から審査を厳格にして、「融資を断る」方向へ傾きかねません。

それを恐れて、経営者保証解除・免除の依頼に二の足を踏む事業者が少なくないのではないかと考えます。

たしかに申請には、事業の財務状況や経営状況を鑑みる必要があります。
経営者保証なしで融資を受けたい、または既存の経営者保証を外したいと考える事業者としては、「今なら可能」「まだ難しい」を判断する具体的ポイントを知っておきたいものです。

次の項目ではこちらについてお話しします。

3、経営者保証解除を依頼できる事業者に求められる具体的要件とは

では、どのような事業者なら「経営者保証解除(既存融資)」や「経営者保証免除(新規融資)」を依頼できるでしょうか?

経営者保証に関するガイドラインの要件は、以下の3点。
・資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
・財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
・金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている

これだけだと、クリアしている「ギリギリ正常先」も多いでしょう。
でも、「ギリギリなんです、余裕のキャッシュがない状態です」という事業者はどうするか?

上記3点を、もう少し詳しく解説しましょう。

(1)資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている

「資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている」
とは、最低でも以下の3点がクリアされている必要があります。

・法人と代表者との関係において、法人と経営者の資産・経理が明確に区分されている
・法人と経営者の間の資金のやりとり(役員報酬・賞与、配当、オーナーへの貸付け等)に
ついて、社会通念上適切な範囲を超えていない
・法人から経営者への貸付金・仮払金等が、総資産の1%以下又は100万円以下である

上記は信用保証協会の保証つき融資で、経営者保証を免除する際に提出する「経営者保証免除対応確認書」に記載されている内容です。

これが最低の基準となるでしょう。

(2)財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である

「財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である」
についての基準は、明確な基準が存在するわけではありません。

それでもあえて「目安」を考えるなら、これも保証協会の保証つき融資「事業承継特別保証制度」の「財務要件」は、クリアしておきたい基準になるのではないかと私は考えます。

財務要件とは、以下の2点です。
1:資産超過
2:EBITDA有利子負債倍率(注)が10倍以内
(注)EBITDA有利子負債倍率=(借入金・社債-現預金)÷(営業利益+減価償却費)

資産超過に関しては「ギリギリ資産超過」ではなく、「ある程度余裕のある自己資本比率の継続」が求められるのではないかと思われます。

「ある程度余裕のある自己資本比率」とは、どれくらいでしょうか。
業種によって異なりますが、一般的に50%以上でかなり良好な状態で、少なくとも30%程度は確保しておくとよいといわれています。

「令和3年中小企業実態基本調査報告書」のデータによると、中小企業の法人企業合計の自己資本比率は39.2%(令和2年度)です。

ちなみにこのような調査に協力する中小企業は業績が好調であることが多く、実態から上振れしがちです。
しかしそれを踏まえても、自己資本比率は30%以上が好ましいのではと思われます。

(3)金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている

「金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている」
については、以下の3点が最低必要条件になると私は考えます。

・事業計画書の作成
・決算書の開示
・試算表の提出(毎月)

よく「試算表は毎月提出するんですか?」と聞かれることがありますが、これは毎月の提出をおススメしています。

4、私の考える「経営者保証解除を依頼する5点の具体的判断ポイント」

これらを総合すると、私の考える「経営者保証解除を依頼できる事業者」とは、以下の5点を満たしている事業者です。

1:法人から経営者に対する「仮払い」「貸付金」がゼロ
2:自己資本比率が2年連続30%以上
3:EBITDA有利子負債倍率(注)が10倍以内
4:毎年、事業計画書と決算書を金融機関に提出
5:毎月、試算表を金融機関に提出

上記要件を満たす事業者は、金融機関にとって「離れられると困る取引先」。
前向きに経営者保証解除に応じてくれるでしょう。

逆にこれらの要件を満たしていなければ、経営者保証解除の依頼=新規融資のハードルが上がる可能性があります。

要件を満たすまで、手間と時間をかけて財務内容・経営内容を整備することをおすすめします。

―――――――――――――――――――――――――

「経営者保証の解除」に関する情報は今後どんどん増えていきます。
その結果、多くの事業者は、
「自分の会社は経営者保証が外せるのか」
と考えるようになるかもしれません。
貴社ではいかがでしょうか?

当社では、「社員が自立的に動いて成果が上がる仕組み作り」で人が自立的に動き、売上アップ、業績アップするサポートをしています。また、ドンブリ経営から脱却して利益が増える骨太の経営体質に変える経営サポートをしており、併せて金融機関との上手い付き合い方のアドバイスや、資金調達のサポートもしています。

ご不明な点やご相談がございましたら、相談初回1時間無料でお話を伺いますので、当社のWebサイトお問い合わせページよりお問い合わせください。

CONTACT
お問い合わせ

ご依頼やお問い合わせは、
以下のフォームより承ります。
皆様、お気軽にご連絡ください。